日本神経心理学会

神経心理学への誘い

私はこうして学んだ

公認心理師から
足立 耕平 先生(長崎純心大学人文学部 地域包括支援学科)

1)神経心理学に関心をもたれたきっかけ

 私は大学で心理学を学んでいました.心理学では「心の働き」という目に見えないものを対象とします.当時はそれがとても抽象的で,目の前にあるはずの物をつかもうとしているのに,つかみきれないもどかしさのようなものを感じていました.そこで,私は何か目に見えるものを通して「心の働き」を考えてみたいと思うようになり,身体と心の関係に興味を持つようになりました.その時,研究室に神経心理学を専門としている先輩がいたことが,この領域に足を踏み入れたきっかけです.また,学生時代にオリバー・サックスの「妻を帽子と間違えた男」やV・S・ラマチャンドランの「脳の中の幽霊」を読んだことも,神経心理学に興味を持つきっかけになっていたと感じています.

2)これまで神経心理学をどのように学ばれてきましたか?今後どのように活動していきたいと思いますか?

 大学院進学後は神経内科医である武田克彦先生に師事し,ケースの示す症状について仮説を立て面接や検査を通して検証していく神経心理学の考え方など,多くのことを学びました.学会や研修会への参加などからも神経心理学,高次脳機能障害についての学びを深めてきています.長崎に来てからはてんかん外科治療前後での認知機能の変化について研究を行っています.また,高次脳機能障害の家族会にも参加し,病院内や検査場面では見ることができない普段の患者さんの姿やご家族の苦悩について知ることができました.近年では標準言語性対連合学習検査(S-PA)の開発に携わったことも大きな経験となっています.認知機能を測定する神経心理学的検査を開発することも心理専門家として大切な仕事であると考えています.

3)これから神経心理学を学ぼうとされる方々にメッセージ

 2017年9月に公認心理師法が施行され,心理専門職として初めての国家資格が誕生しました.今後,医療現場においても公認心理師の活躍の場が広がっていくことが期待されます.神経心理学でのケースの理解には,神経心理学のみならず,認知心理学,生理心理学,臨床心理学,家族心理学,発達心理学など心理学のあらゆる領域での学びが活かされます.神経心理学の領域に携わっている心理専門家は決して多くはありませんが,心理学の学びを総動員できるとてもやりがいのある領域であると感じています.現在,心理学を学んでいる方をはじめ,是非,多くの皆様に興味を持っていただきたいと思っています.

» 私はこうして学んだINDEXへ戻る

このページの先頭へ