日本神経心理学会

学会概要

理事長挨拶

ご挨拶

 神経心理学は,脳損傷における認知や行動の変化と脳との関係を探って,脳のしくみを知り,診断や治療につなげる学問領域です.脳の損傷をひきおこす全ての病態が対象となり,脳血管障害,神経変性疾患,脳挫傷,脳腫瘍,てんかんをはじめ,近年では発達障害などにも応用されています.認知症も,脳機能障害による認知・行動の変化から社会生活がうまく送れなくなる状態で,神経心理学の重要な対象です.超高齢社会で認知症が社会的問題となり,発達障害にも注目が集まっている現在,臨床面における神経心理学の重要性は以前にもまして高まっています.また,進歩が著しい脳画像や神経生理学的手法と神経心理学を結びつけることにより,脳のしくみを解明する神経科学にも大きく貢献しています.動物実験で得られた脳に関する知見に最後のピースをはめるのは,神経心理学をはじめとする人での研究です.

 本学会は1978年に「神経心理懇話会」として脳神経内科医,精神科医を中心に発足し,1982年に現在の「日本神経心理学会」となりました.1985年5月には学会誌「神経心理学」が創刊され,現在まで年4回の季刊誌として発行を続けています.これまでの半世紀近いあゆみのなかで,医師,言語聴覚士,作業療法士など医療関係者だけでなく,神経科学,心理学,言語学などさまざまな領域からの参画を得て,研究の範囲は広がってきました.さらに,神経心理学を現場で実践できる臨床家を育てるため,2019年に日本高次脳機能障害学会と共同で臨床神経心理士の制度を立ち上げ,2022年には最初の臨床神経心理士が認定されています.

 日本神経心理学会には,神経心理学の楽しさを伝え,臨床的,科学的な研究を推進し,次世代を育成していく責務があります.学会ホームページも徐々に改訂され,教育的なコラムや動画を閲覧できるようになってきました.これからも本学会が学問的,社会的な貢献を続けていけるように,会員のみなさまと一緒に,第10代理事長として最善を尽くしていきたいと存じます.

 何卒,よろしくお願いいたします.

日本神経心理学会 理事長 鈴木匡子

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